書籍「仕事の強みの磨き方」を議論のきっかけとして、著者の吉沢が様々な方とディスカッションを行うシリースの第一回は、日本発メガベンチャーの誕生を目指す、EVバイクトップシェアのベンチャー「テラモーターズ」代表の徳重氏とのやりとりとなります。

今回の議論では、

仕事上で200%完全燃焼することの重要さとは?

という点と、

組織として、200%完全燃焼し続けられる環境をどう創りだすのか?

という点を中心に、熱気溢れる議論が展開されました。

 

本記事のアウトラインです(読了5分)

1.一線級人材が企業を飛び出す意義

2.何故、スポーツだと200%が当たり前なのに、仕事では200%を発揮しないか?

3. 組織の【父性】と【母性】との関係

4.試行錯誤する組織運営は「いい加減」がよい

 

それでは、本編です。

1.一線級人材が企業を飛び出す意義

「この書籍にも紹介されていますが、まず重要だと思うのは、創業時のベンチャーに、それぞれの分野で名の通った様々な企業から、一線級の人材が集まってくるかどうか、という点です。」

 

徳重氏は、こう続けます。

 

徳重氏「自分がシリコンバレーのベンチャーキャピタルで働いていた経験からすると、シリコンバレーでは、それが当たり前なんですよ。

 

IBMの中央研究所の所長がスピンアウトするし、技術系ならサン・マイクロ、会計はPWCから来る、CEOはシリアルアントレプレナー(既に一度起業で成功し、新たな起業に挑む人材)で、ドリームチームとは言わないけれど、その道のプロが集う。研究、技術、営業、財務、投資家といった各方面で。

 

みんな、プロフェッショナル。そういう人たちが、ビジョンとか、チェンジ・ザ・ワールドを目指して集う。そこには、安定もクソもない。0からやる。だけれど、チェンジ・ザ・ワールドをやるからこそ、元の会社に留まらず、その会社の役員クラス、エースクラスが飛び出して集まってくる

 

そういう意味では、当社(テラモーターズ)もまだまだだが、日本のベンチャーにはもっともっと、そういう人材が集まるようになっていって欲しい。同時に、ベンチャーはそういう人材を訴求できるくらいに、”チェンジ・ザ・ワールド”、世の中を変えようという、ワクワクする目標を掲げられなくてはならないと思うんです。」

 

そして、徳重氏との話題は、これら多種彩々な面々が集ったときの、その働き方に移ります。

2.何故、スポーツだと200%が当たり前なのに、仕事では200%を発揮しないか?

徳重氏「日本の大企業で勤務し、その後シリコンバレーを経験した上で言えるのは、日本とシリコンバレーの一番の違いは、シリコンバレーではその会社もあの会社も、全員が150%とか200%の力を出し切って、必至で互いにせめぎ合っているという点。スポーツと同じように、自分の全力を出し切っている。

 

どうしても、大企業に勤務すると、優秀な人材が妙なルールとかしがらみとかで、やりすぎると怒られちゃう。自分の感覚的には、折角の人材なのに、60%とか80%とかでやっていることがある。

 

200% vs 60% だったら、負けるに決まってる。しかも、本人たちが60%が好きだったらいいんだけれど、そうは思っていない。もどかしい。それで物足りないから副業だったり、課外活動だったりをしたりする。でも、それお前、どっちも中途半端なんじゃないか?って聞きたくなる。何で、スポーツの世界では150%、200%が、プロでもアマチュアでも当たり前なのに、仕事になるとそうじゃないのか?と。」

200%文中

このように、200%を発揮することの重要性を指摘する徳重氏。その話は、組織を運営する側の姿勢に移ります。

 

徳重氏「組織を運営する側、経営者の側を見ると、そういう200%の戦いというものを知っている人、目指している人が少ない。そこのところを、きちんと考えていないという気がします。」

 

書籍内の「組織運営に関するポイント」での「最初に集める人材にこそ妥協せず、給料とかを気にせずに熱意で口説くべき」という内容と照らし合わせ、徳重氏は以下のように続けます。

 

徳重氏「(書いてある通り)ベンチャーとか、新しい組織は、最初の10人というのが、組織の文化を決めますよね。そのあとに続く人は、この最初の10人がつくった文化に沿った人しかこないから、最初にどんな人を呼んでくるか?というのは、まさにこの200%の組織をつくるときの、最初のポイントかもしれないですね。

 

それから、“互いの強みに頼り合う前提で組織運営する”という点が語られていますが、これをする背景には“思いやり”というものがあると思うんですよね。メンバーがお互いにお互いのことを考え、そこで仕事上も絡み合い、そのつながりで製品やサービスを創り上げているという感覚ですよね。

 

これが、組織を大きくしていった時に、妙にアメリカを真似て”自分の職務領域はここまで”と区切ってしまったりすると、折角のこうした動きが分断してしまいます。」

3. 組織の【父性】と【母性】との関係

続いて、徳重氏の話は、組織を運営する際の【父性】と【母性】というポイントへ。

 

徳重氏「組織運営のポイントの中に、【父性】(=ゴール感・方向性を明示し組織によい意味の”圧力”をかけること)と【母性】(=メンバーへの気遣いや思い遣り)の2つの要素が必要だ、という話が出てきましたけれど、うちなんかでいう【母性】というと、アジアの各国で必至に孤軍奮闘で頑張っているそれぞれのメンバーへ宛てての贈り物、というのがあるかもしれません。

 

とにかく、海外で一人戦っていくというのは、厳しい(※テラモーターズでは、ベトナム・フィリピン・インドといった各国への展開を、若手の社員が少人数で担っている)。モチベーションを維持していくのが、大変です。

 

そんなときに、勇気を与えてくれるのが、歴史の本だったりする。意外と本屋がないんですよね、各国に。そんなとき、自分が読んでいて勇気付けられる本、昔の日本人が、今よりももっと厳しい環境で頑張っていた、という本を読むと、自分自身が勇気づけられる。

 

そこで、自分も、若い連中も、お互いに同じ状況で奮闘しているので、彼らに対して自分が勇気づけられた本を贈る、食材と一緒に贈る、というのが、僕なりの“母性”なのかもしれません。」

 

さらに徳重氏は、こう続けます。

 

徳重氏「そういう意味では、”父性”と”母性”の話は、意思決定と共感との関係を指しているのかもしれないな、と思いました。

 

【父性】が、経営陣の意思決定に関わる部分であり、方向性の提示であるとしたら、【母性】は、経営陣と現場のメンバーとの間で、互いに相手のことに共感することなのかもしれないですね。

 

もしも経営陣が「共感」を疎かにしたり、逆にメンバーが経営陣に「共感」させるのを諦めてしまったら、それはつまり【母性】がなくなり、【父性】としての意思決定が機能しなくなるのかもしれません。」

 

そして、徳重氏は、かつての日本企業の現地法人社員のことを引き合いに出します。

 

徳重氏「家電メーカーでも、本当に凄い現地の社員というのは、本社の説得、もとい本社を共感させることをあきらめない。インドならインド、ベトナムならベトナムにて、現地の一般家庭を訪れ、市場を徹底的に理解し、その材料をギュッと凝縮して本社を共感させる。そういう努力をあきらめてしまって、現地の市場に没入することに手を抜き、“共感してもらえないから”となってしまっては、本当に勿体無いし、間違ってしまうんじゃないかなと思います。」

4.試行錯誤する組織運営は「いい加減」がよい

さらに話は、「試行錯誤の人事」というテーマへ移ります。

 

徳重氏「それから、組織運営をするときに“試行錯誤する”というのはいいですね。」

 

と、徳重氏が触れるのは、書籍にて紹介されているライフネットの中田華寿子氏の組織運営方法「とりあえず組織を編成してみて、1〜2ヶ月運営する。それが上手く機能しなかったら、どんどん次に組み替える。」というアプローチについて。

 

徳重氏「ビジネス上の意思決定でも60%確からしいなら、GOするというのが鉄則。変化は激しいですし、ファクターはどんどん変わっていくので、最初から全てを決めてかかるのではなく、軌道修正能力を大切にする方が、間違いがない。

 

大企業の人の中には、カチッ、コチッとしてしまっている人がいるが、実際は前提条件が変わっていく。ここで描かれているように、人材条件も、人事も、なんたら理論とかあるけれど、実際問題やってみて、合うとか合わないとか、ケミストリー(化学反応)の問題なので、やってみないとわからない

 

そういう意味で、非常にいい加減そうで、この中田さんのアプローチは、理にかなっていると思います。今日本では、”いい加減”というのがなんだか許されないこと、悪いことみたいに言われているような気がする。

 

“いい加減”という話でいうと、僕らはアジアでやっていると、いい加減だから、それを直せって思うんですよ、真面目な日本人であるからこそ。

 

でも、アジアでのビジネス経験が長い日本人から注意されたことがあって、日本語で”いい加減”ってあるだろうと、いい湯加減

 

そういう風に見ると、いい湯加減といい加減というので、気持ちが楽になる。そういう感覚を持って取り組むと、アジアで事業を展開するときも、キリキリしない。それがなんか、日本の場合、きっちりしているけれど、やりにくい、ストレス。変化に弱いという、そういうところにつながって、弱い組織になっている気がしますね。」

 

こうして、徳重氏との対話は、「いい加減」と「試行錯誤」という話題によって、締めくくられました。

5.今回の議論を改めて構造化してみると・・・

話題がいくつか変遷した今回の内容ですが、特にインパクトを感じたのが「なぜスポーツでは200%が当たり前なのに、仕事では60%しか出さないか?しかも、それが好きでやっているわけでないというのは、おかしい」という点です。

 

200%没頭するというのは、フロー状態と呼ばれる状態であり、この状態が続くことそのものが充実感であり、それが高い成果を産み、そして高い成長を個人にももたらすということを、アメリカの著名な心理学者、ミハエル・チクセントミハイ氏が指摘するところです。

 

そして、フロー理論でチクセントミハイが指摘するのは、この200%を持続的に発揮するには、実は環境整備が大切である、という点です。この「持続的に200%が発揮される環境」というものは、実は今回の徳重氏の提示する各要素が、組織としてまさにフロー状態を後押しするものとなっており、それによって個人個人も、フロー状態が持続するような働き方をしているのではないかと感じました(下図)。

200%構造

いかがでしたでしょうか?

徳重氏の提示する「200%発揮する働き方」は、仕事に対する1つの価値観でありアプローチであるかと思います。

今後、本シリーズでは、様々な方の様々な仕事に対する価値観・アプローチを紹介予定です。その1つ1つと照らしあわせて、ご自身の仕事に対する価値観・アプローチがどのような影響を受けるか、お楽しみいただければ幸いです。

 

それでは


徳重氏率いるテラモーターズでは、「日本発メガベンチャーを創る」という想いの元、その成長を支える人材を募集しています。ご興味のある方は、ぜひとも下記URLよりご応募されてみてはいかがでしょうか?

▼本記事に登場したテラモーターズ社の採用URL

http://www.terra-motors.com/jp/recruit/

▼本記事に登場した書籍「仕事の強みの磨き方」詳細・購入ページ

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